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「聞く」と「聴く」、「聴く」と「傾聴」


Original Update by Al_HikesAZ

クライアントとの信頼関係なしにカウンセリングは成り立ちません。なので、以下のような紹介文を見てしまうと、読まずにはいられなくなります。

当代一流のノンフィクション作家のコミュニケーション・メソッド初公開!

イチロー、中田英寿、YOSHIKI、中村勘三郎といった超一流の人の信頼を勝ち得、彼らの本を書いてきた当代一流のノンフィクション作家・小松成美。

なぜ彼らは小松にだけ心を開いたのか?

人の心をひらく技術
人の心をひらく技術

「聴く」と「聞く」

著者は、「聴く」は受動的、「聞く」は能動的として、ご自身がやってるのは「聴く」でなく「聞く」とおっしゃっています。

私たちカウンセラーは、まったく逆の定義をします。

聞く:音や声を感じ取ること
聴く:耳を傾けて注意して聞き取ること

私たちの定義では、カウンセリングは「聞く」ではなく「聴く」です。また、個人的には「聴く」と「傾聴」は似て非なるものと考えています。

「傾聴」をなめるな

「傾聴なんて教わらなくても本を読めばできる」と言われたことがあります。「傾聴では引き出せない」と言われたことがあります。

本当の「傾聴」を知れば、そんな言葉は吐けないはず。

クライエントの話を一つ一つ丁寧に聴き、正しく受け取っているか一つ一つ丁寧に確認し、感じたことをフィードバックします。そうするうちに、クライエントは自分自身の心と対話するようになります。

これが「傾聴」です。

「傾聴」によってクライエントの心が開かれたとき、「気づき」が起こります。

本当の「傾聴」ができれば、自然とクライエントに「気づき」が起こり、認知が変化して、カウンセリングの目的を達してしまうこともあります。

「カウンセリングって、ただ話を聴いてもらうだけ」そう思われるのは、本当の「傾聴」ができないカウンセラーの責任でしょう。

同情・同感・共感

カウンセラーに必要な態度の一つに、「共感」的受容があります。「共感」と似た言葉に「同感」「同情」があります。

「同情」は一方通行

かわいがっていた犬が死んでしまい、「悲しみ」にくれている女の子がいるとします。

「かわいそう」「何とかしてあげられたら」「なぐさめてあげたい」

人間として自然な感情だと思います。しかし、一方通行です。相手の気持ちを推測してることが多く、しばしば的外れのことがあります。

悪気がなくても上から目線であることも。「あなたに何がわかるの?」と拒絶されるのはそんなときかもしれません。

「同感」して堂々巡り

「私も同じ気持ちです!」が同感。同じ価値観を持つ人の間に起こる気持ちです。

カウンセリングを学びはじめた頃、ロールプレイでよく失敗したのが、「同感」→「堂々巡り」のループです。

クライエントと同じ気持ちになり、クライエントと同じ世界に入ってしまいます。そして、クライアントと一緒に悩んでしまいます(笑)

トレーニングでは笑い話ですみますが、カウンセリングの場でやってしまうと、クライエントと一緒に堂々巡りに陥り、信頼は不信に変わっていきます。

話し手が心に描く世界を理解して、その気持ちを感じ取る

話し手の気持ちを肯定的に受容して、心に描く世界を理解して、話し手が感じているかのように感じる。これが「共感」です。

「同感」は共通する価値観を持つ人に起こりますが、「共感」は異なる価値観を持つ人に対しても可能です。

そして先にも述べた通り、クライエントの話を「共感」しながら一つ一つ丁寧に聴き、正しく受け取っているか一つ一つ丁寧に確認して、感じたことをフィードバックします。

そうしているうちに、クライエントは自分自身の心と対話するようになります。

これが「傾聴」です。

丁寧に積み重ねる

傾聴するには、クライエントの言葉を一つずつ丁寧に受容し、共感を重ねていくしかありません。著者の以下の言葉は素敵です。

和紙のように言葉を重ね、信頼を重ねる

心理療法を行うのは、クライエントから信頼を得てからのことです。

聞き手の心も開かれる

クライエントの信頼が得られると、クライエントの心は開かれます。心が開けば開くほど、「気づき」が起こりやすくなります。

では、開かれるのは相手の心でだけでしょうか?もちろん、そうではありません。自分自身の心も話を聞いたことによって開かれていきます。

「そう!そう!」とうなずきました。

クライエントが「気づき」を得るとき、実はカウンセラーも「気づき」を得ていることがしばしばあります。クライエントに成長させてもらっていると感じる瞬間です。

クライエントにご縁をいただき、一緒に成長させていただき、感謝の言葉までいただける。この仕事に就いて、心から幸せだと感じるときです。

参考:ソクラテス式問答法(ソクラテス式質問法)

聴き方の例としてよく使われるのが、ソクラテス式問答法(ソクラテス式質問法)です。当事者が自問して、自己理解を深めるための質問方法としてよく例に出されます。ポイントは以下の4点です。

  • 当事者が自問し、自ら発見できるように問いかける
  • 適度に制約を設けた開かれた質問を用いる
  • どんな回答であれ、相手の発言を尊重する
  • どんな回答であれ、相手の発言に関心を示す

※開かれた質問
はい・いいえで答えられる質問(閉じた質問)ではなく、考えや気持ちを自由に話せるような質問。

質問にはい・いいえで答えるだけでは、答える側の考えは深まりません。答える側が自問し、自ら発見できるようにするために、開かれた質問を用います。「その件について、どのようにお考えですか?」といった要領です。

開かれた質問が良いと言っても、漠然としすぎる質問には答えにくいものです。「調子はいかがですか?」よりも、「この一週間、どのような気分になることが多かったですか?」の方が答えやすいはずです。これが適度に制約を設けた開かれた質問です。

相手の答えが自分の考えと異なるものであっても、常に相手の発言を尊重し、関心を向けます。尊重され、関心を向けてくれるからこそ安心して考えを表明することができ、考えを深めることができます。

カテゴリー:コラム
キーワード:,
投稿日:2011.02.07
更新日:2015.02.03

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