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体罰

先日、久しぶりに師匠の話を聞く機会がありました。体罰に言及した部分を、私の解釈や感想などを加えて紹介します。不適切な内容や誤解を生むような表現があれば、責任はすべて私にあります。

アントニオ猪木さんのビンタ

アントニオ猪木さんの講演などに参加すると、希望者にあのビンタをしてくれるそうです。

手加減しててもかなりの衝撃でしょう。嫌がる人に喰らわせたら暴行になります。でも、希望した人は喜んでいます。「バカヤロー!」なんて言葉を加えてもらったら、うれしさ倍増かもしれません。そんな人にとっては、あのビンタは暴力ではありません。

いじめの基準は、受けた側がいじめと感じること。同様に、指導者がいくら指導と言っても、受けた側が体罰と感じたら体罰ですね。

アメとムチ

心理学では学習を、「経験の結果生じた比較的永続的な行動の変化」と定義します。

行動療法では、ある人が問題を引き起こす行動をとっているのは、その行動を学習したからであり、適応的な行動を学習することによって問題を解消しようとします。

その方法の一つが、アメ(報酬)とムチ(罰)によって適応的な行動を学習することです。オペラント条件付けと言います。

ムチ(罰)による学習は、短期的には有効なことがあります。一方、長期的には、ムチ(罰)を受けないことが行動の動機になるなど、好ましくない結果に至ることがあります。

テレビでおなじみの心理学者・植木理恵さんによると、ムチを恐れて挑戦の意欲をなくすなどの逆効果があるため、アメとムチではなく「アメとムシ(無視)」が合理的とのことです。アメで大切なのは、適切なときに適切なほめ方をすること。ムシ(無視)とは、適応的な行動はほめ、不適応な行動は叱責するでもなく非難するでもなく、流したり無視することです。

以前あるテレビ番組で、「吹奏楽の神様」と呼ばれる先生が紹介されていました。赴任した学校のほとんどで全国大会出場を果たしているそうです。その先生がインタビューで、「僕は音楽のことで生徒を怒ったことは一度もありません」とおっしゃっていました。

目指すべきはこちらですね。

外発的動機と内発的動機

こんな実験をした心理学者がいました。

絵を描くのが好きな子どもたちを2つのグループに分け、一方のグループには絵を描いたら報酬を与えました。もう一方のグループには報酬はありませんでした。

後日、同じように絵を描く機会を作ったところ、報酬を与えなかったグループのほうが自発的に絵を描いたことが確認されました。

同種のこのような実験もありました。

大学生を2つのグループに分けパズルを解かせました。一方のグループにはパズルを解いたら報酬として1ドルを与えました。もう一方のグループには報酬はありませんでした。

休憩時間に大学生が何をするか観察したところ、報酬ありのグループはパズルをやめ、おのおのが好きなことをして時間を過ごしました。報酬なしのグループは、休憩時間にも関わらず熱心にパズルに取り組みました。

報酬を得るための意欲を「外発的動機」、仕事や遊びなどそのものに、おもしろさややりがいを感じて起こる意欲を「内発的動機」と言います。上述の実験から、「意欲⇒行動⇒結果⇒自己効力感⇒さらなる意欲⇒」の好循環、自発的な取組は、内発的動機がもたらすことがわかります。

いつの日か指導者を追い越す教え子は、内発的動機を育てられた教え子の中から出るでしょう。外発的動機からは生まれにくいはずです。

ストレス

ストレスはもともと物理学の用語で、物体に力を加えることによって生じるゆがみを意味します。ボールに圧力がかかってひずんだような状態のことを言います。

ストレス

私たちがストレスを感じたとき、ストレスに対処するためアドレナリンが分泌されます。「わっ!!」と驚かされて、ヒヤーとした感覚が身体を走るのは、アドレナリンによるものです。

アドレナリンが分泌されるのは短時間です。継続してストレスがかかり続けると、アドレナリンに代わってコルチゾールが分泌されます。

風邪薬を飲み続けると効き目が弱くなっていくように、継続するストレスによってコルチゾールが分泌され続けると効き目が弱くなっていきます。すると身体は、ストレスに対処するために一層コルチゾールを分泌します。

夜、眠気を催すとき、成長ホルモンとメラトニンが分泌されています。これらは免疫力を高める働きがあります。これらの分泌が減少すると、細胞の修復力が弱くなるなどします。

コルチゾールがたくさん分泌され続けると、夜になっても成長ホルモンとメラトニンが分泌されにくくなります。それが不眠の原因になります。そして、うつの多くは不眠から始まります。

カウンセリングでは、クライエントが持っているストレス対処方法や、ストレス対処方法になりうる資源について確認・検討を行います。同じストレスにさらされていても、ストレス対処方法の有無で心理反応が異なるからです。

「殴ってもええねんな」と発言するくらいですから、あの先生の頭の中には、ストレスケアのスの字もなかったのでしょう。

私は体罰を全否定しませんが、肯定できるのは適切なケアができる場合のみです。もちろん、何十発も殴るなんて論外です。それは体罰ではなく暴行です。ケアもクソもありません。

参考ページ

こころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト~|厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/
最新情報! ストレスと睡眠障害の深い関係 [不眠・睡眠障害] All About http://allabout.co.jp/gm/gc/302308/
桜宮高校だけで、事件は起こっていない。|日本メンタルヘルス協会:衛藤信之のつぶやき http://ameblo.jp/n-etoh/entry-11456917876.html

カテゴリー:コラム
キーワード:,
投稿日:2013.01.30
更新日:2013.12.04

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