日本と欧米のうつ病治療の違い

Original Update by Joe Houghton
私は医療の分野には、まったく関わっていません。
また、カウンセラーが診察・診断することは認められていません。
心の病の診察を希望される方や、不眠などの身体症状が現れている方には、
医療機関を紹介させていただいてます。
ただ、職業柄知っておくべきことがあるので勉強はします。
最近読んだ一冊を紹介します。
NHKスペシャル うつ病治療 常識が変わる:宝島社(2009/9/17)

日本のうつ治療現場のリポートです。
出版は2009年。当時の状況という認識でお読み下さい。
多剤療法
抗うつ薬を2種類以上処方している割合は、日本が39.4%と飛び抜けて高い。
防衛医大教授で日本うつ病学会理事長の野村総一郎さんによれば、
多くの抗うつ薬を同時に投与して症状が改善するという治験データはないという。P39より引用
心療内科、精神科へ行かれた方からよく聞くのは、わずか3分ほどの診察でうつ病と診断され、たくさん薬を出された経験をしていることです。
ただ、医師の側からするとやむを得ない面もあります。
1日に100人もの患者を診察する状況では、
1人に割ける時間がわずかになるのはやむを得ません。
加えて、現行の診療報酬制度では、診察に時間をかけるほど経営を圧迫します。
5分で終わっても、30分以上をかけても、診療報酬は最大300円しか変わりません。
投薬治療のみに頼らざるを得ない現状があるようです。
【参考】厚生労働省:「精神保健医療福祉の更なる改革に向けて」(今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会報告書)について
診察のマニュアル化
精神障害の診断には「DSM(現在はDSM-Ⅳ-TR)」が多く用いられています。米国精神医学界が作成する精神障害の分類体系です。
DSMは治療方針を決めるに当たって優れたシステムである一方、「浅薄化=マニュアル化」などの問題を招いている面もあるとしています。
DSM-Ⅳの解説部分には『DSM-Ⅳは料理本ではない。これを見て、簡単に診断が可能だ、などとは思ってはいけない』とはっきり書いてあるのも、このような使われ方を怖れたためである。
(中略)さらにまずいのは、医学生や若い医者の教育の影響である。最近の若い精神科医はDSM-Ⅳポケットブックという薄手のマニュアル本を白衣のポケットに入れて診察している。患者から症状を聴きだすと、このマニュアルを見て該当する症状を数えて、『診断一丁上がり』とする、という。
P42より引用
自由標榜
心療内科、精神科は他に比べて設備投資等、金銭的負担が小さいので、開業しやすい分野です。
うつ病患者の増加、自殺者年間3万人超が続く中、国は対策に力を入れています。ビジネスチャンスがある分野と言えます。実際、心療内科・精神科の診療所は増加しています。
医師には「自由標榜」が認められています。医療法で定められた診療科であれば、専門であろうがなかろうが、どれを標榜して開業してもよいのです。なので、心療内科、精神科の看板を掲げていても、精神医学が専門とは限りません。
疑問を感じるところですが、医療の専門家ではありませんので良し悪しの判断はできません。医師本人に聞いてみたくても、中々聞きにくいものです。
念のため申し上げておくと、心療内科・精神科診療所の増加を批判・否定する気持ちは毛頭ありません。需要の多い分野にビジネスチャンスを求める、サービスを提供するのは当然のことです。ただ、患者の側としては、そのような事情も知っておくと良いと思います。
医師選びの注意点5ヶ条
日本うつ病学会理事長の野村総一郎さんによる「医師選びの注意点5ヶ条」が紹介されています。5つのうち1つでも該当すれば、その医師の治療法に疑いを抱いていいという指標です。
1.薬の処方や副作用について説明しない
2.いきなり3種類以上の抗うつ薬を出す
3.薬がどんどん増える
4.薬について質問すると不機嫌になる
5.薬以外の対応法を知らないようだ
国を挙げて心理療法に取り組むイギリス
日本で精神科・心療内科へ行くと多くの場合、治療は投薬のみです。
イギリスでは、認知行動療法(心理療法の一つ)を中心的な治療に据えて成果を上げています。医療費削減などの効果が得られています。
イギリスのうつ病治療ガイドラインを紹介します。
ちなみに、費用はすべて無料です。
- かかりつけ医で診断を行う。うつ病が疑われる患者は、症状の程度を診断される。
- 軽度のうつ病と診断された場合、国営の心理療法センターに紹介され、抗うつ薬ではなく心理療法が施される。
- 中度から重度のうつ病と診断された場合にはSSRI(現在主流となっている抗うつ薬)処方される。
イギリスでは軽度のうつ病には投薬治療を行いません。
軽度のうつ病には抗うつ薬の効果はほとんどない、という臨床試験結果があるからだそうです。日本では、症状の程度にかかわらず薬物治療を行うことが多いようです。
日本では残念ながら、カウンセリングを受けられる精神科・心療内科は少数です。受けられる場合でも、保険が利くケースと利かないケースがあります。
頓挫したカウンセラー・セラピストの国家資格化
過去に臨床心理士を国家資格化しようという動きがありましたが、実現されませんでした。心理学会内の意見がまとまらなかった、医師の団体から反対の声が上がったなどが原因です。
日本精神神経科診療所協会が強い反対していたことは、以下の見解より読み取れます。
臨床心理士及び医療心理師法案要綱骨子に対する(社)日本精神神経科診療所協会の見解(PDFファイル)
医療以外の分野においても、心理学的行為には医師の指示が必要であるとしています。既得権を守るという強い意志を感じる、というのはうがった見方でしょうか。
カウンセラーやセラピストによる不適切な介入によって症状を悪化させてしまった例があり、不信感を持つ医師がいる、との話が紹介されていました。
逆に、精神科以外でも、カウンセリングや心理療法が必要と考える医師もいます。病気や怪我から精神的なダメージを受ける患者がいるからです。
私は臨床心理士ではありません。臨床心理士が国家資格化されると私は、医療に関わる分野で活動できないでしょう。
もともと臨床心理士と同じ土俵で勝負するつもりはありません。クライアントの立場に立てば、国家資格化・保険適用に賛成です。
セカンドオピニオン
精神疾患の診断は医師の主観に頼る部分が大きく、薬が必ずしも有効でないケースがあります。セカンドオピニオンを利用するのが望ましいようです。
カテゴリー:コラム
キーワード:うつ,心療内科,本,精神科,認知行動療法
投稿日:2011.05.25
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